私が行っている短期療法の手法の一つにコンプリメントというのがあります。カタカナで書くと難しそうに聞こえるかもしれませんが、要は「褒める」ことです。なぁんだ簡単なことじゃないか、と思われるかもしれません。そうなんです、褒めることは簡単なんです。しかし、今あらためて振り返ってみて一日にどのくらい人褒めてきているでしょうか。私は意外に少ないんじゃないかと思っています。簡単なのにすることが少ない。なので、人から褒められることってなかなかない体験だったりしませんか。

私もカウンセリングではクライエントのことを褒めることが多々あります。意識して行っているので当たり前ではあるのですが、この褒められ体験は単に「褒められた、嬉しい」だけでは終わらない効果があると思っています。

新しい視点をもたらす「褒める」

なぜ褒めることがカウンセリングだけではなく日常会話でもポジティブな効果を生むのでしょうか。私は褒めることで相手に新しい視点を与えてくれるからだと思います。特に何らかの悩みであったり自己嫌悪などネガティブな気分にとらわれているときというのは自分では自分のことをわかっているようで、実は見落としてしまっている自分のポジティブな面があることが多いと思います。ネガティブな色眼鏡で自分を見てしまっていると例えても良いかもしれません。そのネガティブな眼鏡を取り外す、少し色を変えるための関わりが褒めるなのです。自分で自分を褒めるという手法も有効だと思いますが、できれば自分以外の人から褒められたいですよね。そうして褒められることで「あ、自分って意外と頑張っているんだ」とか「自分って結構やれているじゃん」といった自意識の再構築を促進してくれます。

褒めるときには事実に基づいて褒めると良い

褒め方にも色々あるのですが、私が褒める時に気をつけているのは「事実に基づいて褒める」です。なんとなく「あなたは良い人だよ」とか「偉い、立派」と言われても、何が偉いのか、立派なのかが相手に伝わりません。この褒め言葉に行動と紐付けて見ると褒め方も変わってきます。何故かと言うと行動というのは変わりようのない事実であるのでそれと紐付いていると褒め方に強い印象がついてきます。「自分はだめだと言っているけれど、あの時あんなにいい仕事してくれたじゃないか。これからも期待しているよ」とか、「良い資料だね、こういうふうにまとめられるのはすごい能力だと思うよ」とか。

山本五十六が語ったと言われている「やってみせ、言って聞かせて、 させてみせ、 ほめてやらねば、人は動かじ」にあるように褒めることはとても大事なコミュニケーションの方法だと思います。