メンタルヘルス

残業代を支払うことでメンタルヘルスは向上するか

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今日のブログはこの記事を取り上げて書いていこうと思います。

『残業手当を全額支給すること』が、年休取得日数の増加・メンタルヘルスの状態の良好化につながる~『平成29年版過労死等防止対策白書』過労死等の現状と実態解明のための調査研究結果(厚生労働省)

タイトルを見た時「ん??」と思いました。残業代を支払うとメンタルヘルスの状態が良くなる??あまり因果関係を感じませんでした。こちらの点を引用してみます。

アンケート調査の再分析結果~「労働時間の正確性」、「残業手当の支給の有無」が及ぼす影響~
●『労働時間を正確に把握すること』が、「残業時間の減少」、「年休取得日数の増加」、「メンタルヘルスの状態の良好化」に資すること。
●『残業手当を全額支給すること』が、「年休取得日数の増加」、「メンタルヘルスの状態の良好化」に資すること。
が示唆される。

どのように再分析をしたかはわかりませんが、まず労働時間の把握が、残業時間の減少につながるのはわかります。少なくとも残業を減らそうと思っている事業所ならばまずどのくらいの労働時間の把握をするでしょうし、把握できれば残業を減らす動きが生まれて、その結果メンタルヘルスの状態向上につながるのは想像がつきます。

しかし、残業手当の全額支給がメンタルヘルス状態の向上につながるのはいまいちしっくり来ません。残業代を支払うことは当たり前とは言え、きちんと支払われればそれそれで良いことです。ですが、それでメンタル面にプラスになるとはあまり思えません。実際私がカウンセリングをさせて頂いたクライエントさんの主訴は残業代の不払い、残業時間の過多ではなく、人間関係に関してでした。また、私が以前いた会社でも残業代の支払いはしているにも関わらず、毎月何らかのメンタル疾患にかかり休職する人が絶えませんでした。これをどう説明付ければいいのでしょうか。

この点についてもうちょっと掘り下げたかったので元の白書に目を通してみました。

出来事別の事案数をみると、男女総数で「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」に該当した事案が 259 件と最も多く、次いで、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」(210 件)、「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」(202 件)、「上司とのトラブルがあった」(189 件)、「(重度の)病気やケガをした」(145 件)の順で多かった。「特別な出来事」に該当する「心理的負荷が極度のもの」の事案は男女ほぼ同数であったが、「極度の長時間労働」は男性の事案が多かった。自殺事案では、「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」(75 件)、「特別な出来事」に該当する「極度の長時間労働」(42 件)、「上司とのトラブルがあった」(37 件)の順で多かった

これは精神疾患発症事案についての記述を抜粋したものです。一番は仕事内容や量の大きな変化とあります。恐らく難しい仕事や勤務時間が長い部署への異動などが起こったときと考えられます。これが大きなストレス要因になるのはわかります。そして、第二のいやがらせや暴行、トラブル、こういった精神的緊張もストレス要因として挙げられています。この点で考えてみると、ネガティブな職場環境の変化と強い緊張状態の継続が精神疾患の要因になっていると思われます。

ここまで資料を読んでみて私が懸念していることは、「残業を減らし、残業手当を支払えばメンタルヘルス対策はできていることになる、あとは個人の資質の問題」になりはしないだろうかということです。確かに残業が減って家族や友人と過ごす時間が多くなることは精神衛生上とてもよいこと、また働いた分だけ給料が入ってくるのもよいこと。しかし、パワハラや暴言、暴行、いじめは残業時間、残業手当とは全く関係のない要因でありまた個人の資質の問題ではなく会社の体質の問題であること。そして、こういった要因でメンタルヘルスに問題を抱えることになるケースも少なくはないだろうということです。

ただ、こういった調査を国が行って情報発信をすることは大きな意味があると思います。さらなる調査に期待です。

 

 

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