コラム

部下をいじめる上司はなぜいじめをするのか

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組織の中で働く人は経営者でない限り上司がいます。その上司という生き物、うまく機能すれば大変おめでたいのですが、機能していないとその被害というのは本人が思っている以上に甚大になるようです。そして単に無能というだけではなく、自分の部下をいじめる上司も少なからずいるようです。

  • 会社に行きたくない
  • 仕事にやる気が出ない

なんてことが起きるのはその部下をいじめる上司が原因だったりするのではないでしょうか。では、上司が部下をいじめる心理とはどのようなものなのでしょうか。

いじめられるのはダメな部下だからは間違い

部下をいじめる上司の常套句として、

「俺はあいつのためにやっているんだ」

というのがあります。

上司本人は本気でそう思っているかもしれませんが、指導といじめは別物です。ですが、どうもそれを上司も部下も混同をしてしまってはいないでしょうか。では、指導といじめは何が違うのでしょうか。私が考える違いは以下の通りです。

  • 指導は部下の成長を図るものである
  • 指導はフェアに行われる
  • 指導に感情は不要(効果を上げるためにあえて感情的に見せるのはあり)
  • 指導がどのような表現方法であっても、部下の自尊心を損なうことはない
  • いじめは部下の成長を念頭に入れていない
  • いじめはアンフェアに行われる
  • いじめは感情的であることが多い
  • いじめは部下の自尊心を損なう

仕事を基準にした公平で公正な「厳しい上司」なのか、それとも自己中心の単なる「いじめ上司」なのか。二種類の上司は、部下に全く異なる影響を与える。公正観と公平観を備えた上司の下では、相当に厳しく指示されようが、部下もやる気が出るし、仕事にも積極的になれる。だが、ただの「いじめ上司」からの攻撃を受けると、その部下は憂鬱に悩み、仕事にも覇気がなくなる。

『問題上司―「困った上司」の解決法』(P77)

従っていじめられるのは部下が悪いのではなく、上司の自己中心的なわがままがまわりを振り回しているだけであると言えます。しかもタチが悪いことに、自分がしていることがいじめであるという認識はどうやら低いようです

私は上司の立場にいる人にも多くのインタビューを行った。上司たちのコメントは、淡々とした口調で事実だけを述べる場合もあれば、なぜ、こんな問題で質問されなければいけないのかと不快感を表に出す場合もあった。ただ、共通していることが「一つ」だけあった。上司の誰一人として、自分たちが部下をいじめたり、不公平な扱いをしている認識を持っていなかったことである。

『問題上司―「困った上司」の解決法』 (P67)

上司はなぜ部下をいじめるのか

部下をいじめる上司にもいくつかのパターンがあります。そのパターンを見ていただくとお分かりかと思いますが、原因は部下ではないのです。

追い詰められた上司

景気の悪化、部署の成績低減、予算の削減、厳しいノルマを課す上司。これは何も部下だけの話ではありません。上司もまた、その上の上司がおり、強いプレッシャーを受けています。上司であるため責任も大きく、プレッシャーも相当なものでしょう。思うように成績が伸びない、上からは毎日のようにチクチク言われて、自分の会社のキャリアも危ない。

そのような危機が訪れた時、上司は自分の評価を守るために、部下の無能さをあげつらう。あいつがダメだから、もっとできる部下だったらいいのに

リストラによって管理職の人数が少なくなったときにもかかわらず、彼らはリストラ導入以前以上の成果を出すように企業から求められている。その要求水準が高くなればなるほど、上司の中にはこれには応えられない者も数多く出てくる。そのようなとき、上司は自分の力不足に苛立ち、途方に暮れる。それまでに築き上げてきた自信が根底から揺らぎ、茫然自失となる。そこで、自分が置かれている過酷な状況を忘れるため、あるいは崩れかけた自信をなんとか維持し、体面を保つ手段として、部下を攻撃するようになる。

『問題上司―「困った上司」の解決法』 (P21)

このように、外部要因によって「部下をいじめる上司」になってしまうという事。そう考えると、誰しもが「部下をいじめる上司」になる可能性を秘めているといえるのではないでしょうか。また、景気が良く、予算も潤沢で、チクチク言ってくる役員がいなかったら、「部下をいじめる上司」にはならなかったかもしれませんね。

悪意にかられた上司

景気などの外部要因によって「部下をいじめる上司」になってしまうケースが多い中、そういったストレスとは全く無縁な理由で部下をいじめる上司がいることを知っておくべきでしょう。

各種の調査データを見ると、上司の10%以上の人間が、全く理由のない攻撃や虐待を部下に対して繰り返していることがわかっている。「理由がない」ということは、取りも直さず、そうした上司の行為がほぼ完璧な悪意によって支えられているということだ。仕事上のストレスなどとは無縁のしろものなのである。

『問題上司―「困った上司」の解決法』 (P90)

悪意にかられた上司はどのような人か。一言で言ってしまえば、本人の性格がなせるワザであり、いじめることで安心感や、自己満足感、快感を得る人たちのことです。

  • 自分の権力を見せつけたい
  • 自分が有能であることを見せつけたい
  • 自分の評価を高めたい

こういった欲求は悪意にかられた上司でなくとも、組織人であれば多かれ少なかれ持ってはいるものだと思います。しかし、問題は上司が自分の欲求を満たすためにその権力を行使していることではないでしょうか。少なくとも、組織が上司に与えた権力はそんなことのために使うために与えたわけではないはずです。

権力を見せつけたい上司は自分の権力の影響力に不安を感じている

上司になって決裁権、裁量権を持つようになったものの、果たして自分の部下たちは自分の権力に従うだろうか。もしかしたら表では言うことをよく聞いているが、裏では舌を出しているのではないだろうか。そういった不安にかられると、自分の権力の持つ影響を確認せずにはいられなくなります。そして、いじめをして相手を抑え込むことで不安の解消を図ります。

「俺はあいつを言いなりにできる」

有能さを見せつけたい上司は自分の能力に不安を感じている

有能さを見せつけたい上司は、仕事を完璧にこなすことを至上目的としています。それは別の言い方をすると、完璧に仕事をしないと有能と見なされないと認識していることでもあります。しかし、完璧に仕事をこなすというのは常人ではなかなか難しいもの。そうなると、上司は自分の評価が上がらないと認識し、相対的に評価を上げるために、部下の評価を下げるようないじめをしてしまいます。

「俺はあいつよりは仕事ができる」

評価を高めたい上司は上の人からの評価に不安を感じている

評価を高めたい上司は、目線は常に上の人に向かっています。上の人に認められたい。しかし、部下の方が上の人に気に入られたりするともう大変。部下をいじめることで上の人からの評価を自分に向けさせようとします。

「上からの評価は俺のものだ」

具体的ケースとしての「上司の責任逃れによる部下いじめ」

このような心理が働くケースとして以下のようなストーリーを考えてみました。例えば、とある重要で大掛かりなプロジェクトが発足したとします。多くの予算と人員を巻き込んでプロジェクト成功に邁進していったものの、着地点が理想とはかけ離れたところになってしまいそうな雲行き。

上に立つ上司であれば、全体の情報を把握しているのでそういった流れは容易に掴むことができるはずです。最初は、方向を修正すべく尽力しますが、それも成果が出ず刀折れ矢尽きた時、今後はこの失敗の責任をどうするのかということが重要課題になります。責任者である上司は当然免れ得ないのは仕方ないとして、その責任追及の手を少しでも緩めるために、部下をいじめ、無能扱いをします。あわよくば、プロジェクトが失敗したのは部下のせいだと社内で認識されれば自分の立場を守ることができる。

  • プロジェクト失敗による責任追及の不安=追い詰められた上司
  • 失敗による権力低下=権力を見せつけたい
  • 失敗によって露呈する自分の無能さ=能力を見せつけたい
  • 失敗による社会の対面の危機=評価を高めたい、維持したい

現実にはこのような複数の心理が混在していじめという行動を起こしているのではないかと思います。

 

部下をいじめる上司の心理、そこには上司なりのプレッシャーと不安が混ざっていることが分かります。ですが、かといって上司がいじめによって部下の尊厳を損なってよい理由にはなりません。次回はいじめがある職場でどのように生き延びていけばよいかを考えてみたいと思います。

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